たぷつきません

おなかがでてきた。もうたぷついてるやん。

長年連れ添った相棒にさよなら

 右下の親知らず周辺が腫れるという現象に、二十年近く断続的に悩まされていたが今日ようやくピリオドが打てた。その親知らずは奥から前に向かって水平に生えているために、奥歯を横から殴るような形で固定しちゃって、その間に歯茎ができず、膿がたまるスポットになってしまっていた。腫れて歯医者に行くたびに面倒がられて「また腫れるようなら抜きましょう」と言われていた。次に腫れるころには自分が引っ越してしまっていて違う歯医者に行くという繰り返しで親知らずはどんどん強固に成長してしまっていた。

 今回も駅そばの歯科医から「今、痛みがないようなら先送りしようか」という提案が出てきたので、「またか!」と思い、今度こそ抜いてもらうよう頼んだ。それが今日。計画としては親知らずが奥歯の側面に接地しているので親知らずの歯の表面を輪切りにして奥歯との隙間を作ってから抜くということになっていた。
 しかし表面の切断は行ったものの*1、親知らずの歯根がしっかりと埋まっていて何度もトライしてもらったけど全然抜けないという状況になっていた。途中で「あれ?これは...いけないぞ」とか聞こえるので、ものすごい不安に。

 これはまずいと、治療を中断し、関東労災病院の歯科口腔外科への案内状を渡され、すぐ行くように言われた。すでに親知らずの表面を切断済みで出血しているからガーゼを噛まされた状態で、麻酔が効いている間に行った方が良いと言われ、歯科から出された。そこでの会計も無かったし、見捨てられたような悲しい気持ちになった。
 しかたなくタクシーを拾い自分の足で向かった。到着して受付にいくと「加藤さんですね?」と察知してもらえたので、これは話が早いと思いきや、普通に初診受付の手続きに時間をかけられた。問診表も書かされる。そんなん電話で伝わっているんでしょー。緊急でこっち来たのに、事務手続きが過ぎる。早く案内してくれー!!と思いながらも、仕方なく書く。「今日はどのような症状ですか?」という文面には涙が出そうになった*2
 ようやく担当医のところに案内されるも、レントゲンのために院内を移動。歩くと血流良くなって奥歯が脈打つ感じになるし、徐々に感覚が戻ってくる恐怖が。その後、ようやく担当医と問診。最初の歯科医と切断の仕方が違う説明を受けた。歯根は二股に分かれている。2つの根で支えているので頑丈なので、一本の根になるよう垂直に切断して、分かれたそれぞれを抜くという処置だった。なるほど道理だ。それと顎の骨の神経をかなり刺激するので一か月〜半年は顎の麻痺が続くらしいが、手足の筋肉などと違って日常使うものでもないので、生活に支障は無いらしいとのこと。手術の同意書にサインして、ようやく事に当たってもらった。

 最初の歯医者では呼吸困難に陥りそうだったのに、かなりスムーズ。途中、ノミとハンマーのようなものでガンガン叩かれて、そのたびに拳を作って顎の下から押し付けて支えてくださいと指示される。傍目には結構ハードな光景だったろうけど、麻酔を追加してもらったので痛みはほとんど無かった。
 ようやくまずは1本、つぎに残りの1本が。「抜けましたよ」という優しい声での状況報告。一時間近くかかったので感動。しかし奥歯と親知らずがあった間に、歴史がかった膿だまりができていて、それを掃除するのに、さらに30分ほど費やされた。麻酔が効いているので痛くないが、口をあけ続けているために首の後ろの筋が痛くなった。肩もこった。
 途中タクシーで移動しているときは、死ぬかもと思っていたので、お医者さんと助手さんに本当に感謝した。しつこいぐらい何度もお礼を言ってしまった。助手さんの吸い取りの手際が素晴らしく良くて呼吸が苦しくなかったことを言いたくて仕方なかったのだ。
 術後の説明を受ける。歯茎を縫っているので来週抜歯。5日分の痛み止めはもらったけど、腫れは1〜2週間続くらしい。

 しかし地獄は治療後すぐに来た。麻酔が抜けてきて、会計待ちですでに痛みがピークに。唇や顎などまだ麻酔で痺れているにもかかわらず痛むので、完全に抜けたらどんだけ痛くなるんだろうと、また恐怖が襲った。薬をもらったら痛み止めをその場ですぐ飲むように言われていたので実行するも、激痛は2時間以上続いた。

 最初の2〜3日は痛むので一日4回痛み止めを飲んだ方が良い。寝る前にもう一度飲んでくださいと言われたので、先ほど飲んだが、ようやく触らないかぎりは特別痛まない状態に落ち着いた。
 長き闘いを、ようやく終えることができた。「持って帰られますか?」と毎回悩まされたあんちくしょうと対面させられたが、もうそこにはかつての強靭な雄姿はなく、いくつかの欠片の集まりでしかなくなっていた。お前と過ごした青春の日々にさよならと、病院の方で弔ってもらうことにした。

*1:しかし親知らずがボロボロだったのでうまく輪切りにできず力を入れると欠けるという感じに。

*2:もちろん、ちゃんと「近所の歯科医で治療途中の親知らずが切断された状態」と素直に書いたけど